負け犬たちの熱狂人生
「SHOE DOG ~靴にすべてを。~」は、スポーツ用品メーカーであるナイキ創業の物語です。作者は、創業者であるフィル・ナイトとなっています。
筆者は、自分たちの事を“負け犬”だと言っています。そんな負け犬たちががナイキという巨大企業をどのように創り上げて行ったのでしょうか?
簡単にではありますが、本作の魅力を少しでもお伝えできればと思います。
読みどころ
この作品は、著者が1962年に世界周遊旅行に出る所から始まります。
その後、自身の記憶を辿りながらターニングポイントとなる出来事を年代ごとに記述。なお、出来事が起こった当時のアメリカや世界の状況についてもさりげなく説明されているので、20~30代の読者であっても読みやすい構成になっています(読者も若い人に読んでもらうことを願っている)。
ありのままの気持ちを描写
本作品はナイキの創業者自身が書いている本なので、その時々に揺れ動く感情が細かく描写されています。
例えば、会社が成長していく中で常に資金繰りに悩み失敗したらどうしようと不安に駆られていた事や、一方で失敗してもまたやり直せばいいと思っていた事が描かれていて、大企業を作った偉大な創業者がとても人間臭く、身近な存在に感じられる1冊になっています。
更に、各地を回って靴を販売する社員から「こんな取組みをしている」「これだけ靴が売れた」「頑張っているから励ましの言葉が欲しい」と手紙が頻繁に来るが無視していた部分から、著者がこの本を“正直”に書いていることが伝わってくる。
日本人・日本企業との関わり
創業当初のナイキは、日本のシューズ・メーカーであるオニツカの商品の輸入販売を行う会社であったことを皆さんご存知でしょうか!?
作者が、単身日本の神戸にあるオニツカ本社に乗り込みアメリカでの販売を認めてもらうところから、法廷闘争となり仲違いしてしまう様子が描かれています(フィル・ナイトの目線なので、オニツカ側の考えや弁解が載っていないので個人的に調べてみたいなと思いました)。
また、オニツカとの関係が悪化し会社が苦境に陥った時に救いの手を差し伸べたのも、日本企業である日商岩井(商社、現在の双日)でした。戦後、日本を復興させ世界第二位の経済大国まで押し上げた当時の日本人(商社マン)の気概や覚悟は改めてすごいなと感動します。本筋からは離れてしまうかもしれませんが、現代の我々日本人も当時の人たちのバイタリティーを見直さなければならないと思います。
この本では、日本との関りがたくさん出てくる点も間違いなく読みどころのひとつです。
作者が伝えたかった事
様々な事件や会社の危機、そして当時の作者の心境などについて比較的淡々と描かれているため、最後まで読み進めないと作者の“伝えたかった事”が分からない構成になっています。しかし、終盤も終盤に「みんなに言いたい。自分を信じろ。そして信念を貫けと。他人が決める信念ではない。自分で決める信念だ。心の中でこうと決めたことに対して信念を貫くのだ。」と書かれている部分が作者が本当に伝えたかった事ではないかと思います。また、ここにたどり着くまでに作者自身の生き様を詳細に記述してきたことで、このフレーズに説得力が生まれるのではないかと呼んでみて感じました。
作者は作中で、「若い人たちが失意に陥らないよう、手伝いができらたと思う。」とも述べており、「20代半ばの若者たちに言いたいのは、仕事や志すものを決めつけるなということだ。天職を追い求めてほしい。天職とはどういうものかわからずとも、探すのだ。天職を追い求めることによって、疲労にも耐えられ、失意をも燃料とし、これまで感じられなかった高揚感を得られる。」と語っている。
作者は、20代半ばの若者へのメッセージとしていますが人生100年時代の現代では、いくつになってもこの言葉の意味について考え“天職”を追い求めていく姿勢が大切なのではないでしょうか。
前半・中盤は、会社の歴史的な形であり退屈に感じれる方もいるかもしれませんがそこの部分があってこその終盤の深みにつながるので、少しずつでも前から読まれることをオススメします。
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