覆面作家による経済小説
最近読んで面白かった小説が、梶山三郎著「トヨトミの野望(出版社:講談社)」「トヨトミの逆襲(出版社:小学館)」というシリーズものです。作者である梶山さんは、経済記者としての顔も持っている事から覆面作家として活動しているようです。
作者が経済記者ということもあり、小説でありながら妙にリアルで、作中に登場するトヨトミ自動車に日本を代表するアノ自動車メーカーをついつい重ねてしまいます。。。
トヨトミの野望〜サラリーマン社長と創業家の戦い
第1作目となる「トヨトミの野望」は、トヨトミ自動車の創業一族である豊臣家とサラリーマン社長武田剛平との権力争いが軸となっています。
剛腕社長 武田剛平
「トヨトミの野望」における主人公である武田剛平は、エリートには程遠く海外の僻地に飛ばされていたが偶然創業家一族の経営者に見出され、さらには前任の社長が病に倒れたことによりトヨトミ自動車初のサラリーマン社長となる。武田は、持ち前のバイタリティや行動力・決断力を駆使し、トヨトミを世界の自動車メーカーへと導いていく。
作中の武田社長のストレートな発言や外国政府さえも手玉に取る思慮深さなど、どれも痛快で小説の中での話と分かりながら「あっぱれ」と言いたくなるような活躍ぶりです。
そんな武田社長が・・・
業績もグングン伸ばし名経営者との呼び声も高かった武田社長でしたが、自身が密かに立ち上げたプロジェクトが仇となり社長を解任されてしまいます。
作品の後半では武田社長と豊臣家の面々に加え、創業家に取り入ることで次期社長の座を狙う副社長などの部下たちをも巻き込んだ権力闘争が実に生々しく描かれていて、某自動車メーカーで実際に起こったことではないかと勘ぐりたくなるようなリアルさです。
そして創業家へ大政奉還
武田社長退任後もサラリーマン社長が続きますが、創業者一族の会長の一言により創業家への大政奉還が。しかし、創業家のプリンスが社長就任後に・・・という展開になっています。
もう、この当たりを読んでると「これ、完全にト○タじゃん」ってなります笑。でも、なんとなくこれまで好きになれなかった新社長がダメなりになんとかしようと頑張る姿に、読者が段々と応援したくなってくるストーリー展開はさすがだなと感心させられました。
トヨトミの逆襲〜成長と未来〜
シリーズ2作目となる「トヨトミの逆襲」では、1作目の終盤で社長に就任した豊臣統一が主人公となっています。
業績は堅調ながら
前作終盤で迎えた大ピンチを乗り越え業績は堅調に推移。しかし、電動化への出遅れや迫りくるCASEの波に社長の統一自身は危機感を覚えるているが、部下達には危機感が足りないような気がしてやきもきしている(そうなったのは自身の責任もおおいにあるのだが)。また、忠臣を装って取り入っていく事で自身の出世や私利私欲に統一を利用していく部下の姿も描かれているのが前半部分になります。
経営者として成長の時
後半では、燃料電池車が今後の主力になっていくという予想が外れ、電気自動車(EV)が世界の大きな潮流となっている中、出遅れているEVで起死回生の一手として統一は他社がまだ成し遂げていない航続距離1000キロのEV車を発売するとブチ上げる。しかし、コアとなる電池の改良がネックとなり苦戦するという展開になっています。
前作に続き困難な状況に直面する豊臣統一社長ですが、ある事をきっかけに大きく成長し、トヨトミ自動車も世界のフロントランナーとして再び輝くというストーリーになっています。終盤になると、作中に登場する年月日が未来になっていることから作者の希望が大いに込められているのではないかと思われます。
シリーズを通じて作者が伝えたかったこと
この「トヨトミ」シリーズは、小説という形をとりながら世界有数の自動車メーカーに至る礎を築いた人物の功績に再び光を当てるとともに、日本有数の産業である自動車産業に頑張って欲しいとの想いを込めて現状に警鐘を鳴らし、期待を込めて明るい未来を描いたのではないでしょうか。
私個人としても、作者が描く未来のように日本の自動車メーカーに世界をリードし続けて欲しいです。また、日本の自動車メーカーが生き残る限り、梶山先生の「トヨトミ」シリーズの新作が登場し続けると思うので、そういった意味でも頑張ってほしいところです笑
経済小説ですが、誰もが知る大企業をイメージしながら退屈せずにあっという間に読み切れる作品になっているので、ぜひ一度読んでみてください。
個人的にはドラマ化して欲しい作品なのですが、やはりト○タに配慮して地上波では難しいかな。。。
また、梶山先生の正体についても気になるなぁ。。。
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