ビットコインとは何か?が分かる1冊
一時期に比べ仮想通貨に関するニュースを目にすることが減りましたが、先日Twitterでモーニングスター株式会社が株主優待として仮想通貨を配布するというツイートを目にして「配当ももらえて、株主優待の仮想通貨の値上がり益も期待出来て最高やん!」と考えたわけです笑。
モーニングスター社が、株主優待としてリップルの「XRP」を配布。そう来たか!— 中島真志 (@nakajipark) April 26, 2020
モーニングスター[4765]:「仮想通貨(暗号資産)XRP」および「株式新聞ウェブ版」による期末株主優待の実施に関するお知らせ 2020年2月21日(適時開示) :日経会社情報DIGITAL:日本経済新聞 https://t.co/hNdtUOn7Dp
ただ、「仮想通貨についてほとんど知らない」ということでネットで調べて評判の良かった、野口悠紀雄さんの「仮想通貨革命 ビットコインは始まりにすぎない」を読むことにしました。そんな感じで読み始めたのですが、内容はビットコインにとどまらず幅広い知識が得られ、個人的には知的好奇心が刺激されてワクワクする内容でした!!
ビットコイン(仮想通貨)とは!?
ビットコインをはじめとした仮想通貨は、「通貨」ではないとするお役所の見解に基づき最近では「暗号資産」などと呼ばれることも増えてきました。また、今のところビットコインなどは「通貨」として店舗などで使う「支払い手段」というよりは、「投資対象」として認識されているのではないかと思います。また、仮想通貨はサイバー攻撃などにより盗まれてしまうので危険である、匿名性が高いので犯罪に使われていると考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本書は、このような仮想通貨にまつわる誤解や誤った認識を改めて正しい知識を身につけて欲しいとの想いをベースに書かれており、多角的な面から仮想通貨について解説しています。
仮想通貨は怪しい?危ない?
マウントゴックスの破綻やコインチェックの流出事件等の影響もあり、「仮想通貨は盗まれたりするので危ない」や「匿名でやり取りできるのでマネーロンダリングなどに使われていて怪しい」などと考えている方は多いのではないでしょうか。しかし、作者はこれは仮想通貨自体の問題ではなく、それを取り扱う人たちの問題であることを丁寧に説明し、正しい知識を身に着けることの大切さを訴えている。
例えば、戸締りもせずに大金を置いておいた家庭から現金が盗まれたというニュースを見て、誰も“日本円が危ない”とは言わないはずである。コインチェックの流出事件などはそのようなものであり、本質を理解せず、仮想通貨・ブロックチェーンを怖がって目を背けてしまっているとこれから起こる大きな変革にどんどん取り残されてしまう・・・読み進めていくうちにそんな気がしてきます。
なぜ仮想通貨は画期的なのか?
仮想通貨の基盤となる仕組みとして「ブロックチェーン」というワードを耳にされた事があると思います。このブロックチェーンの概念についてもできるだけ分かりやすく解説しようと試みられています(私は、1度読んだだけでは“なんとなく分かったような気がする”レベルなので、あと何回か読み直してきちんと理解できるようにしたいと思います)。
そんな状態ですが、ブロックチェーンの何が革新的なのかというと、「正直者が得をして、悪意がある人には労多くして得るものがない」という仕組みにより大勢の参加者により取引が機能するようにしている点だと理解しています。どういうことかというと、普通の通貨であれば国や中央銀行がバックに付いていることが信用となっており、また透かしやホログラムといった偽造防止策を取り入れることで悪意がある人に対抗しています。一方、仮想通貨はブロックチェーンという仕組みによりこれまでの取引履歴が連なっているので、1箇所を改ざんしようとするとその前の取引についても改ざんしないといけないといったようにどんどん取引を遡っていかなければならず、結果として膨大な計算をコンピュータにさせなければならないということで悪意ある人物に対抗しようとしています。反対に、取引が発生するたびに参加者が複雑な計算をこなして新たなブロックを生み出されますが、この計算に協力した参加者には報酬が支払われるという形で制度が円滑に進むように設計されています。みんなが仕組みを支えあう制度になっており、政府や中央銀行のような元締めがいない点が特徴の一つとなっています。
また、作中ではビットコインだけではなくイーサリアムやXRPがそれぞれどのような特徴を備えているのかも丁寧に説明されています。
ビットコインは通貨なのか?
「仮想通貨は通貨なのか?」という問題についても本書の中では論じられています。
そもそも通貨というものは何かというところから始まり、マネーストック・マネーサプライといったものについても説明が行われており、金融政策において中央銀行がやろうとしている事についても理解が深まる内容となっている。
また、SuicaやEdyといった電子マネーとの違いも説明されていて、今までなんとなく違うと思っていたレベルだったものが「ここまで違うのか!!」と驚かされます。
仮想通貨は投資対象になりうるか
本書はビットコインなどによる財テクの本ではないので、作者は仮想通貨自体に投資するのではなく、仮想通貨やブロックチェーンを使ったサービスなどを行う企業に投資することを提言している。一時期、「億り人」なる言葉が話題になり、私自身もビットコインなどを投資対象として考えている面が強かったのですが、この言葉を読んで雷に打たれたような衝撃を受けました!!
読み進めていくうちに、仮想通貨・ブロックチェーンがとてつもない影響を与えることが分かってくるので、作者の提言がますます説得力を持ってきます。
仮想通貨によってこれから起こること
作中では、仮想通貨やブロックチェーンによって起こる変化(作者はこれを仮想通貨革命と呼んでいる)はいくつか紹介されていますが、個人的に印象に残ったのは次の3つです。- 送金コストの低下→スモールビジネスがやりやすくなる
- ホワイトカラーのオートメーション化
- 新たな資金調達方法の確立
送金コストの低下
私は、仕事で海外にお金を送る事があるのですが、とにかくこの手数料が高い!!
なぜ高いのか?、またどんな手数料体系になっているのかについても驚くほど詳細に本書で書かれているので、普段海外送金などに縁のない人にもいかに手数料が高いかがお分かりいただけるかと思います。
そして、海外向けならず国内間の送金コストが下がることによって、利益率の低い小規模なビジネスであっても始めやすくなることが説明されています。企業などに興味がある方には、非常にチャンスだと感じられる内容だと思います。
また、このあたりの話は小さな飲食店がクレジットカードの導入をためらう理由などにも通じるので、いま政府が力を入れているキャッシュレス決済について理解を深めるきっかけになるかと思います。
ホワイトカラーのオートメーション化
仮想通貨やブロックチェーンは、自分には関係ない世界の出来事だと思っている方が多いかと思います。しかし、サラリーマンとして働く我々にとって無関係ではないのです!
これまで、自動化といえば工場の生産ラインなどがメインでしたが、ブロックチェーンによりホワイトカラーの仕事がオートメーション化されると本書にはあります。しかし、一方ではまだ実現していないのでということで具体例などは載っていません。だからといって「まだまだ先の話じゃないか」と安心するのではなくて、常にアンテナを張って情報収集をしていないと突然仕事を失う日が来てしまうかもしれません。
新たな資金調達方法の確立
この本の中では、アメリカのネットベンチャーがIPOに際して巨額の手数料を支払った事例などをもとに既存の調達方法ではコストがかかることが述べられています。しかし、仮想通貨を使えばこれまでよりも簡単に“自分株式”を発行して資金調達が可能だと作者は言っています。
今回のコロナウィルスの流行に際して、銀行からの融資や国からの補助金を受け取るのには時間がかかる事が明らかになりました。作者が言うように仮想通貨を使った資金調達が簡単に行えるようになれば、スタートアップなどの資金調達だけではなく、こういった非常時に危機に瀕している企業にとっても役立つかもしれません。
まとめ
今回、この本を読むまでビットコインをはじめとした仮想通貨についてなんとなく知っているという事がどんどんクリアになっていきました。
更に、ブロックチェーンを始めとした仮想通貨の様々な仕組みついても巻末の補論も含めて詳細に書かれています。仮想通貨の仕組みは、一般人にとっては単純ではないので時には理解が追い付かない箇所もありますが、作者は丁寧に解説しようと試みていらっしゃるので私にとっては知的好奇心が刺激される一冊でした。
本書に書かれているこれから起こりうる変化は、まだまだ身近なところまで来ていないのでずっと遠い未来の出来事だと考えてしまいます。しかし、思い返してみると私が小学生の頃にパソコンが普及し始めました。そして、中学生ぐらいには携帯電話が、大学生の時分にはスマートフォンが一般的になりました。僅か20年弱の出来事です。そう考えると、作者が言うような世界があと数年で来てもおかしくないのかもしれません。私たちはいま、本の中にあるように「変化に抵抗するのではなく、適応する必要」が求められているのかもしれません。
少しでも興味を持たれたらぜひ一度読んで頂き、これから起こりうる変化をチャンスと捉えて頂けたらなと思います!