2020/05/16

【読書】アキラとあきら

個人的 池井戸潤作品No.1!!

最近、家で読書と合わせてよく映画やドラマを見ているのですが、先日Amazon PrimeWOWOW制作のドラマ「アキラとあきら」を見ました!

これは、池井戸潤さんの小説をドラマ化したものなのですが、他の池井戸作品と少し趣が違って見終わった後に爽快感が残る作品でした。また、主演の向井理さんと齋藤工さんがそれぞれアキラ・あきら役にぴったしでしたし、さすがWOWOW作品と言える豪華な俳優陣の演技が素晴らしかったです!
アキラとあきら」がとても気に入ったので小説も買って読んでみたのですが、こちらも非常に良かったです!!

アキラとあきらの物語

アキラとあきら」の主人公は、山崎瑛(やまざきあきら)階堂彬(かいどうあきら)の二人の“アキラ”。
小説では、山崎瑛と階堂彬の子供時代から社会人までの約30年を過去から現在という流れで描かれています。このある人物の人生を過去から順に描いていくというのは、他の池井戸作品と少し異なっており珍しいのではないでしょうか? (ドラマ版では、二人が社会人になり同じ産業中央銀行に入行したところから始まり、現在と過去を行ったり来たりしながら物語が進んでいきます)


山崎 瑛

主人公の一人である山崎瑛の父は、かつて静岡県の三島で工場を経営していましたが瑛が小学生の時に倒産。瑛は、母や妹と夜逃げ同然で祖父母の所へ逃れます。倒産の原因は、取引先に収めた部品が不良品で賠償しろと要求された事に加え、銀行が追加の融資に応じなかったことが一因となっており、この倒産が瑛のその後の人生に影響を与えます。
その後、父は知り合いの会社に再就職できましたが、瑛が高校三年生の時に不良品が生じた責任を取らされクビになってしまうかもしれないという状況に陥ります。そんな状況で大学に進学したいと切り出せず就職を決意する瑛でした。しかし、父の勤務先の取引銀行の担当者が瑛の自宅に通ってきて夜遅くまで父と銀行に提出する資料作りを行った結果、父の勤務先は銀行からの追加融資を受けることに成功し、父も引き続き働くことができるようになります。そして、瑛が大学へと進学する道が拓けました。
瑛は東大卒業後、かつての父のような人を助けたいと思い大手銀行である産業中央銀行に入行。しかし、現実とのギャップに思い悩む。


階堂 彬

階堂彬は、業界王手の海運会社「東海郵船」の経営者一族として何不自由なく子供時代を過ごします。
階堂家の長男であり、文武に秀でた彬は祖父や父から将来家業を継ぐことを期待されるも本人は決められた道を進むことに反発。家業と関係ない一般企業への就職を考えていた大学生の時にたまたま東海郵船を担当する産業中央銀行の行員に接する機会があり、東大卒業後は産業中央銀行へ入行。
バブルで浮かれた世の中や銀行に戸惑い、懸念を頂きながらも持ち前の才覚を生かして順調に銀行でキャリアを重ねていく。そんな中、父である階堂一磨が病に倒れ、周囲の人々の思惑から彬の弟である龍馬が東海郵船の社長に就任するのだが、、、


アキラとあきらの出会い

子供時代の境遇がまったく正反対と言ってもいい瑛と彬ですが、何度か偶然すれ違う場面があります。そして、二人が大学卒業後に産業中央銀行に就職することで、二人の運命が点から線にやがて糸のように絡み合っていく姿が小説では描かれています。
また、ドラマ版の方が瑛と彬それぞれの担当先を引き合わせてビジネスに繋がるコラボレーションを実現や、二人を知る同級生の女性を巡る関係が描かれたりと小説にはない二人の繋がりが登場します。

本作品の見どころ

本作品の見どころは3つあります。
1つめは、全く違うタイプの瑛と彬ですが、お互い持ち前の才能を生かしてひたむきに仕事に取り組んでいく姿に好感を抱く点です(小さい頃から知ってる子がこんなになってっという感慨に近いかもしれません笑)。

2つ目は、池井戸作品には珍しく主人公の半生を子供の頃から30年近くにわたって順にストーリーが展開されており、登場人物の背景なども丁寧に描かれているのでそれぞれのキャラクターが非常に立体的な点です。
銀行が救いの手を差し伸べてくれる工場を潰してしまった瑛の父が、瑛が銀行に就職することになった時に言った一言。彬の叔父たちがバブルの時に無謀なプロジェクトに乗り出してしまった理由など、そこまでに至る経緯や背景が物語の中に散りばめられていてとても奥行きのある作品になっています。

3つ目は、物語後半にかけて彬の二人の叔父のバブル時の失敗に巻き込まれる形で東海郵船が危機に陥ります。しかし、瑛と彬が力を合わせることでなんとか乗り越えられハッピーエンドを迎えます。このエンディングでは、半沢直樹シリーズのようにそれまで主人公を徹底的にいたぶってきた悪役に反撃し叩きのめすといったテイストとは異なり、読み終わった後に痛快感よりも爽快感が残る作品になっている点です。

小説版とドラマ版の違い

小説では二人のアキラの小学生時代から順を追って描かれていますが、ドラマ版では二人が産業中央銀行に入行するところからスタートし過去と現在を行ったりする形に再構成されています。また、瑛と彬の関係をより結びつけるようなオリジナル要素も加えられている。個人的には、小説をリスペクトしながらドラマ版としてより良くしようという試みでありこれはこれでありなのではないかと思う。
また、瑛と彬がまっすぐに仕事に打ち込む姿や見終わった後の爽快感はドラマ版でもまったく失われておらず、主演の向井理さんや齋藤工さんに加えて脇を固める役者さんのチョイスが素晴らしいなと感じました。

やはり、地上波と異なるWOWOWだからこそできた骨太な作品だと思いますので、ぜひ小説と合わせてみて下さい!!


今回、ご紹介した本が気になった方は下記から購入可能です!

2020/05/14

【読書】嫌われる勇気

勇気の心理学

有名な書籍ですが、なんとなくタイトルが好きになれずこれまで読まなかった「嫌われる勇気(岸見一郎・古賀史健著、ダイヤモンド社)」に挑戦してみました。

嫌われる」という文言が印象に残りますが、本の中身は嫌われることを推奨しているわけではなく「勇気」を持って自分自身を変えていく事を応援する内容ではないかと思います。そんなアドラー心理学を本書では、「勇気の心理学」と呼んでいます。

読みやすい対話形式になっている

心理学の本と聞くと、専門用語が出てきて読み進めにくイメージを持たれる方もいるのではないかと思いますが、本書では哲学者と青年が対話する形をとっているので口語的な文章になっています。このため、本書ではギリシア哲学を研究する「哲学者」と哲学者の噂を聞きつけてやってきた「青年」の二人しか登場しません。
しかし、この登場人物の「青年」がなかなか過激笑。「世界はどこまでもシンプルである」という持論を持つ「哲学者」をなんとか論破しようと議論を吹っ掛けるが、その口ぶりは攻撃的であり物言いも過激である。一方で、優秀な兄と比べられ育った過去からコンプレックスの塊のような「青年」にはどこか「自分もそういったコンプレックス」があるなと親近感を抱いてしまう側面があります。

そんな「青年」からの問い(時には批判)に、ギリシア哲学の研究者でありながらアドラー心理学に通じている「哲学者」が事例を用いながら答えていき、アドラー心理学の核心に迫っていきます。

原因論と目的論

私は、心理学には詳しくありませんがフロイトやユングといった人物の名前を耳にした事はありました。そして、アドラーはその2人に並ぶ心理学の巨頭のようです。

この本によると、フロイトやユングの心理学は「○○という過去の事象があったから△△という行動をとる」といったように現在の人物の言動などを過去の出来事が原因とする立場です。一方、アドラー心理学では人々が取る行動の裏には、例えば親の気を引きたいといった「目的」があるといった立場を取っていることが説明されています。
普段、私たちは「原因論」で物事を捉えがちなので、この「原因論」と「目的論」の違い(物事の捉え方のアプローチの違い)を理解するのがポイントではないかと思います。
(難しい言葉を極力使わず、事例を用いて説明されているのでそんなに構える必要はないかと思います)

問題は後半にかけて!

本書の頭から中盤にかけては、「青年」の攻撃的な言動に苦笑いしながらも楽しく読み進めていくことができます。しかし、後半にかけてアドラー心理学の神髄である「共同体感覚」という用語が出てくるあたりから難しくなってきます。用語が難解なのではなく、これまでの私たちの価値観を一変させるような新たな考え方なので戸惑うといった方が正しいかもしれません。
何度も何度も繰り返し読むことで、アドラーが提唱している考えが腹に落ちるのではないかと思います。

嫌われる事を推奨しているわけではない

冒頭でも書きましたが、「嫌われる勇気」というタイトルが印象的ですが、アドラーは決して嫌われる事を推奨しているわけではなく好かれる」「嫌われる」という他人の評価に依存する事から脱却し、自分が持っている能力を生かして他者貢献を行い「自分は有益だと」感じられるよう過ごしていくことを提唱しています(難しいのが、他人から褒められるかどうかではないということ)。

本の中では、アドラーはすべての問題は「対人関係」だと捉えているとされ、アドラー心理学がその答えになると書かれています。一通り読めばアドラー心理学の考え方の導入部分は知る事が出来るかと思いますが、アドラー心理学を実践しながらどのように他人と適切な距離を取っていくかについてはもう少し詳しく知りたいと思いました。


よく読むべき本として上位に出てくるだけあり、何か人生や人間関係について示唆を与えてくれる本だと思うので、みなさんも一度読んでみてはいかがでしょうか?


今回、ご紹介した本が気になった方は下記から購入可能です!

2020/05/10

【読書】罪の声

昭和史に残る大事件に巻き込まれた子供たち

小栗旬さん星野源さんで2020年映画化という文言に惹かれ手に取ったのが、塩田武士著「罪の声(講談社)」です。

この本は、1984年に起こったグリコ・森永事件(作中ではギン萬事件と表現)をベースとした小説。ノンフィクションということであるものの、グリコ・森永事件についてかなり取材をされているようでまるで本当の出来事のように詳細に描かれており、小説のストーリーがグリコ・森永事件の真相ではないかと感じてしまうくらいである。
詳しい事件の描写に加えて、この小説のポイントとなっているのが昭和史に残る大事件に「複数の子供が関わっていた」という部分に焦点を当てている点である(グリコ・森永事件では犯人が子供に声明文を読み上げさせたカセットテープなどを送りつけている)。
作者が想像し1つの小説となった、事件に関わった子供たちのその後がなんとも言えない切ない結末となっている。

あらすじ

京都でテーラーを営む曽根俊也が、父の遺品と思しきものの中からかつて日本中を震撼させた「ギン萬事件」で使われたものと同じ音声が収められたカセットテープを発見。しかも、そのテープの声の主は子供の頃の自分であることに気づく。
一方、大日新聞の文化部所属の記者である阿久津英士はひょんなことから社会部の年末企画の応援に。そして、「ギン萬事件」について調べるように上司から命じられる。
2人の青年が全く別の角度からアプローチを取りながら、昭和史に残る大事件である「ギン萬事件」の真相に迫っていき、事件に関わった子供たちの現在の様子についても明らかになっていく。

見どころ

この作品の見どころは大きく3つあるのではないかと思います。

見どころ① 詳細な事件描写

作者の塩田さんは、かつて新聞社の記者であったそうで本作のベースとなったグリコ・森永事件について丹念に調べられたようです。そのため、作中の「ギン萬事件」の犯人や警察の行動などについて詳細に記述されていてフィクションとは思えないリアルさがあります。
フィクションの部分とグリコ・森永事件として実際に起こった部分が違和感なく融合しているので、「ギン萬事件」の真相として描かれている事が実際の事件の真相ではないかと思ってしまいます。


見どころ② 二人の主人公

「罪の声」という作品の主人公である、曽根俊也と阿久津英士。
曽根は、「ギン萬事件」に自身が関わっていたという事に加え親族が関係者ではないかという事から真相に迫っていこうする。反対に、阿久津は他部署の応援という形で当初は乗り気ではなかったものの、段々と事件の真相究明に興味を持ち記者として事件の核心に近づいていく。
物語の頭に全く立場が違う2人登場しますが、この2人が作中でどう交差するのかというのも見どころの1つかと思います。2人の運命が交わる事で、事件の真相をより立体的に描く作者のスキルは凄いなと驚かされます。


見どころ③ 事件に関わった子供たち

グリコ・森永事件では3人の子供の声が使われていた事から、小説の中の「ギン萬事件」でも3人の子供が関わっているとしてストーリーが展開されていきます。
事件に関わった大人だけではなく、子供について作者なりに想像し、1つのエンディングを形作るという切り口が新鮮に感じました。また、後半は子供たちのその後についてかなりの量を割かれている点から作者の思い入れも感じます。
事件に関わった子供たちのその後についても着目しながら読んでみて下さい。

事前知識は必要か?

私は、グリコ・森永事件が起きた当時は生まれていなかったので事件についてはテレビの特集番組などで目にする「キツネ目の男」の似顔絵についてはおぼろげに知ってはいましたが、事件の詳細についてはほとんど知識はありませんでした。しかし、十分に小説を楽しめました。なので、個人的には事前知識は必要ないかなと思います。しかし、読み終わった後でインターネット等で事件について調べてみると作者がいかに緻密な取材を行っているかに気づき驚かされるはずです。

本作品は、2人の主人公が登場しその家族や同僚、更に物語の核となる「ギン萬事件」の関係者など大勢の人物が登場します。この様々な人物の関係性や発言を踏まえてストーリーが展開されていくので、こういった複雑な小説が苦手な方はツライと感じる部分があるかもしれません。しかし、そういった複雑な人間関係が「ギン萬事件」の真相を解き明かしてく核となるものであり、フィクションでありながらここまでのリアリティを感じる要因であるのは間違いありません。
このため、外出自粛といったある程度まとまった時間がとれる今だからこそ一気に読むのにおススメの作品です。StayHomeのお供にぜひ一度読んでみて下さい。

ちなみに映画では、小栗旬さんが阿久津を、星野源さんが曽根を演じるようです!
様々なファクターが詰め込まれた作品なので、これを映画という決められた時間の中でどう表現されるのか非常に楽しみです


今回、ご紹介した本が気になった方は下記から購入可能です!

【神戸元町】ダーツバーの絶品カレー!?

思いもよらぬ本格スパイスカレー 先日、たまたま通りかかった元町の路地で 本格的なスパイスカレー が食べられるお店を発見! しかも、なんとお店はカレー専門店ではなくてダーツバー!!ランチ限定でカレーを出しているそうです。 メニューは全10種類!! ご紹介するお店は、ラ...