半沢直樹 最新作!!
ドラマの新シリーズが絶賛放送中の半沢直樹ですが、最新作が発売されました!!
なんと、舞台は大阪西支店時代!!「銀翼のイカロス」の続編と思って購入しましたが、巻頭の主要登場人物の紹介ページを見て、「ん?浅野匠支店長???」となりました汗。正直、最初はがっかり感が、、、しかし、読み進めていくうちに物語に引き込まれていき、夢中になって読み進めていました。
今回は「家族と友情」の物語
これまでの半沢直樹シリーズは、銀行行内の派閥争いや出世や保身のために張り巡らされた権謀術数がストーリーのメインでした。しかし、今回はどちらかというと行内よりは東京中央銀行の取引先に軸足が置かれています。なかでも、今回メインとなる仙波工藝社の経営者一族である仙波家・堂島家のヒストリーや、物語の鍵となるアルルカンの絵の作者である仁科譲とその友人佐伯陽彦との友情が見どころです。
ちょっとした行き違いから解けた家族のつながりが、半沢というバンカーを通じて再び結ばれ、やがてそれが思いもよらない方向へと転じ奇跡を起こすといったストーリーになっています(ネタバレしたくないのであまり詳しく書けないのが残念)!
小説の中では、昔のある出来事で疎遠になってしまった親族同士のやり取りにおいて辛辣な皮肉が飛び出したりしますが、舞台が大阪という事もあり関西弁でのやり取りのためそんなやり取りも極端にシビアな雰囲気になり過ぎず、いい塩梅のテンポを生んでいるような気が個人的にはしました。
絵画の知識は不要!
本の帯に、「探偵半沢、絵画の謎に挑む」とあるので絵画に関する知識が求められるかというとそんなことはありません。なぜなら、物語の中で絵画が重要な鍵となっているのは間違いありませんが、作中に登場する仁科譲というモダンアート界の巨匠もその作品もフィクションだからです。
個人的には、「探偵半沢、絵画の謎に挑む」という帯については不満です。この帯の内容だとこれまでの半沢直樹シリーズからガラッと内容が変わってしまった印象を受けてしまいますが、基本的には本部などから嫌がらせを受けながらも取引先のために半沢が奮闘するという内容に変わりはありません。今作も、読むと銀行内部はこうも嫌な奴ばかりなのかと思ってしまうような池井戸節全開の作品です笑。
大阪西支店屋上のお稲荷さんのモデルは!?
今回の作品では、大阪西支店の屋上にある東京中央稲荷に半沢たち行員が月初の恒例行事として参拝するシーンから始まります。関西で高架を走る電車に乗っていたりすると結構屋上にお稲荷さんを祀っている建物を目にします。また、大阪市内の会社の建物の前に大きな鳥居があったりと、意外に大阪人は信心深い面があるのかもしれません。
話しは戻りますが、大阪西支店の屋上にあるお稲荷さんのモデルは勝手に大阪駅前第一ビルにある福永稲荷大明神ではないかと考えています。大阪駅前ビルは、JR大阪駅や阪神梅田駅すぐにある、まさに大阪の中心地にある大型ビルですが屋上にお稲荷さんがあり、大阪駅前ビルに入居する方がお世話をされているようです。こちらは参拝することが可能なので、お近くに寄られた際はよってみてはいかがでしょうか?
正一位福永稲荷大明神
https://www.1bld.com/history/daimyojin.html
本作品に隠れテーマあり!?
先ほど、今回の半沢シリーズは「家族と友情」の物語と書きました。読んでいて感じたのは、本作品のもうひとつのテーマは手数料ビジネスへ大きくシフトしている銀行への警鐘ではないかと思います。
長期に渡る低金利に影響で現在の金融機関を取り巻く収益環境は非常に厳しいものになっており、従来の預金を集めて融資を行うという銀行のビジネスモデルだけでは食っていけなくなっています。そこで、金融機関はどこに活路を求めたかというと手数料ビジネスです。作中にもありますが、銀行は積極的にM&Aの仲介等を行い手数料を稼ごうと躍起になっています。小説の中では、頭取の大号令のもと銀行の都合で取引先にM&Aを迫る姿が描かれ、トップが建てた方針が曲解され組織が暴走する様を批判的に作者が描こうとしているのではないかと個人的には感じました。
中小企業は、大企業と違い会社とオーナー一族が一体となっているケースが多く、企業経営者にとっては会社は我が身同然です。そういった中小企業にとっては会社を売るという事は家族の一大事になるわけですから、作中にあったように銀行の都合でゴリ押しするものではなく相手に寄り添った対応が必要だと作者は考えているのではないでしょうか。
経営者の高齢化も進んでおり、親族間での事業承継や経営者一族以外への事業譲渡などにおいて銀行が果たす役割が高まっている中で作者なりの警鐘を鳴らしたかったのではないかと個人的には思いました。
まとめ
「銀翼のイカロス」の続編ではないと知って当初はがっかりしましたが、読み進めていくとこれまで通りの半沢直樹でありながらこれまでになかったテイストも加わっており、購入してよかったなと思いました(今回は、ちょっと倍返しが弱いかな)。
まさかの大阪西支店時代に遡る展開だったので、正直連続ドラマ化は難しいかなと。ひょっとしたら単発ドラマとかでやるのかもといった感じです。
ドラマ「半沢直樹」と合わせて、こちらの「アルルカンと道化師」も一読の価値ありですので、ぜひお手に取ってみて下さい!!